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 相続財産の不動産が共有のとき

 不動産の所有形態には、単独所有(単有)と共有があります。

 相続財産である不動産が共有である場合、どのように登記すればいいでしょうか? 今回の事例では、土地建物が夫婦共有で、そのうちのお一方に相続が発生した場合についてみていきたいと思います。

今回の事例

父  調布栄一郎 令和元年9月10日死亡 

母  調布花子  存命 

長男 調布栄太郎 存命

二男 調布栄二郎 存命

父栄一郎名義の不動産

土地 栄一郎と花子の2分の1ずつ共有

建物 栄一郎と花子の2分の1ずつ共有

 まず、遺産分割協議書の書き方ですが、共有不動産についても、通常の遺産分割協議書の書き方と同じように書けば大丈夫です。

 そのうえで、物件を書く欄の最後に「持分2分の1」などと書き加えておきます。下の例を見ていただければわかると思いますが、あまり深く考えずに、土地だったらば「地積」の下に、建物だったら「床面積」の下に、「持分2分の1」と書き加えるだけで、あとは、通常の意思案分割協仔魚と全く同じように記載すれば大丈夫です。

遺産分割協議書の例

遺産分割協議書

被相続人    調布栄一郎(令和元年9月10日死亡)

最後の本籍   東京都三鷹市中原1234番56

最後の住所   東京都調布市深大寺一丁目2番地8

 

 上記被相続人の遺産について、共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果、次のとおり決定した。

 

1 調布栄太郎は、本条記載の不動産を取得する。

(1)土地

所   在   調布市深大寺一丁目

地   番   2番8

地   目   宅地

地   積   123.4㎡

持   分   2分の1

(2)建物

所   在   調布市深大寺一丁目2番地8

家 屋 番号      2番8

種   類    居宅

構   造    木造スレートぶき2階建

床面積     1階  56.78㎡

            2階  56.78㎡

持   分   2分の1

 

以下省略

 

 次に登記申請書の書き方です。

 単独所有の不動産については「所有権移転登記」を行いますが、共有持分の場合には「持分移転登記」を行います。

 そして相続の場合、持分の一部が移転することはありえず、持分すべてが移転することになるので、「持分全部移転登記」を行います。

 

登記申請書

登記申請書

登記の目的      調布栄一郎持分全部移転

原因      令和元年9月10日 相続

相続人      ( 被相続人 調布 栄一郎)

  東京都調布市深大寺二丁目3番地7

  持分 2分の1 調布 栄太郎

添付情報

登記原因証明情報(原本還付)    住所証明書    代理権限証書

課税明細書

令和元年10月1日申請 

東京法務局 府中支局 御中

課税価格      金20,000,000円    

登録免許税      金80,000円

その他事項   送付の方法により登記識別情報を記載した書面の交付並びに原本還付請求をした原本の還付を求めます。

送付先:代理人の事務所

不動産の表示(省略)

 この登記のポイントは、登記の目的に、「亡くなった人の名前+持分全部移転」と書くことです。

 もう一つは、新たに所有者となる人の名前の前に、「持分2分の1」などと記載することです。

 それ以外は、所有権移転登記の時と同じです。

 ただ、登録免許税の計算の際に、固定資産税の評価額を2分の1にすることを忘れないでください。評価証明書に記載されているのはあくまで不動産全体の評価額ですが、今回名義が変わるのは2分の1の持分であり、登録免許税も名義が変わる分の2分の1の価格をもとに計算すればよいからです。

 今見たケースは、土地と建物の持分が同じケースでしたが、持ち分が異なる場合はどうすればよいでしょうか?

 その場合の登記申請書は次のようになります。 

登記申請書

記申請書

登記の目的      調布栄一郎持分全部移転

原因      令和元年9月10日 相続

相続人      ( 被相続人 調布 栄一郎)

  東京都調布市深大寺二丁目3番地7

  持分後記記載の通り 調布 栄太郎

添付情報

登記原因証明情報(原本還付)    住所証明書    代理権限証書

課税明細書

令和元年10月1日申請 

東京法務局 府中支局 御中

課税価格      金20,000,000円    

登録免許税      金80,000円

その他事項   送付の方法により登記識別情報を記載した書面の交付並びに原本還付請求をした原本の還付を求めます。

送付先:代理人の事務所

不動産の表示

所在     調布市調布一丁目

地番     1567番8

地目     宅地

地積     105.02㎡

持分     4分の1

 

所在     調布市一丁目1567番地8

家屋番号   1567番8

種類     居宅

構造     木造スレートぶき2階建

床面積     1階 75.67㎡

          2階 75.67㎡

持分     2分の1

 前の申請書を見ていただくとわかると思うのですが、持分移転登記では、新所有者である相続人の氏名の前に持分を書くことになっています。不動産によって持分が違うと、どう書いたらわからないという疑問がわくと思います。

 逆に言うと、通常の持分移転登記との違いはここしかありません。

 まず、相続人の氏名の前には、「持分後記記載のとおり」などと、持分を後記することを記しておきます。

 そのうえで、不動産の表示のところに申請書例のように、各不動産ごとに持分を記載します。

 それ以外は、持分が等しいときの持分移転登記や所有権移転登記と全く同じです。

 

所有権移転と持分移転の両方があるとき

 ここまでは、相続財産が共有不動産であるときのことをみてきました。

 では、相続財産に単独所有の不動産と共有不動産の両方がある場合はどうしたらよいでしょうか?

 このようなケースは、実は、割とよくあります。

 典型的な例としては、土地建物を単独所有しており、その他に私道持分を持っているような場合です。東京では、公道に面しておらず、その代わりに、私道に面している建物が比較的よくあります。そして、私道に面している場合ですが、私道を単独で所有している場合もありますが、何人かで共有している例も割とよく見かけます。

 このような場合、単独所有の不動産については所有権移転登記を、共有不動産については持分全部移転登記を行うことになります。

※この「所有権移転登記」と「持分移転登記」は一件で申請できるのか、二件に分けて申請する必要があるのかという問題があります。結論としては一件で申請できるのですが、一般の方がご自身で登記をする場合、「所有権移転登記」と「持分移転登記」の二件の登記申請を行ったほうが簡単だし、間違いがないと思います。一件で申請しても二件で申請しても、結論にほとんど違いがなく、強いて言えば、登録免許税の計算の際の端数切り捨ての関係で、登録免許税に数百円御違いが出る程度ではなっかと思います。 

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