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 遺産分割の社会保障への影響を教えてください

 遺産分割の結果財産を手にしたり、分割後に不動産を売却したりすると、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険や医療保険の負担割合、限度額認定などの社会保証費に影響が及んだり、扶養親族から外れてしまう可能性があったりと、相続人の方のその後の収支や生活に影響が出る可能性があります。

 ここと税金の問題を見落とすと、相続人間で不公平感が生じる可能性が出てきます。なぜなら、仮に、相続によって同じ金額を取得したとしても、人によって、税金や社会保障面への影響が違う場合があるからです。

 そこで、相続財産を手にしたり、売却した場合に、社会保障関連の支出にどのような影響が出るのかをまとめてみました。 

遺産分割と所得と税金

 遺産分割(相続)で財産を得た場合、相続の対象にはなり得ますが、その他の税金(例えば不動産取得税)は発生しないのが原則です。代償分割によって代償金を得た場合でも、相続税の対象とはなりえますが、その他の税金が発生することはありません。

 ただし、次のような場合には所得が発生し、税金が発生する可能性もあります。

・換価分割をする場合

・分割の方法に関わらず、相続後に不動産や株式等を売却する場合

 例えば不動産を例にとると、不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得税を納める必要が生じます。相続の場合、先代や先々代が取得したときの価額と売却価額の差が所得(譲渡益)となるので、東京の場合、多くのケースで譲渡所得税が発生することになるかと思います。

 そして、意外と忘れてしまいがちなのが、社会保障費や保険料への影響です。所得があるということは、税金が発生するだけでなく、扶養から外れるとか、健康保険料への影響があるとか、或いは、介護サービスの限度額認定が受けられなくなるとか、社会保障について、様々な影響があり得ることも意味しているのです。

 そこで、換価分割を想定し、相続時の不動産売却を例にとり、社会保障への影響を考えていきたいと思います。

換価分割における不動産売却と所得

 遺産分割や相続手続において、相続税以外の税金が発生するのは、換価分割等により、不動産を売却するときです。既に触れたように、相続財産を売却する場合、相続発生時の価額を取得価額と考えるのではなく、先代や先々代等が最初にその不動産を取得したときの価額と売却価額の差が所得(譲渡益)となります。バブル期に取得したような不動産は別ですが、昭和50年代以前に取得したような不動産の場合、多摩地区を含む東京では、多くのケースで譲渡所得税が発生することになるかと思います。 

 そして、所得があると、社会保障にも影響が及びうることも既に触れたとおりです。

 換価分割の場合、換価して分配を受けるすべての相続人について、譲渡所得税の問題と、所得があることから生じる社会保障等への影響が生じる可能性が出てきます。

 従って、税金面だけでなく、扶養や医療、介護面への影響まで考えたうえで、遺産分割方法を考える必要が出てきます。同じ額を受け取ったとしても、代償金として受け取る場合、譲渡所得税を支払う必要も生じませんし、保険料等に影響が及ぶこともないので、場合によっては、換価分割ではなく、代償分割を選ぶ方が得な場合もあります。

 もっとも、代償金の支払い時期を売却後にすることはできても、代償金の額を「売却代金の4分の1」というような決め方をしてしまうと代償分割ではなく換価分割とみなされてしまう可能性が生じるので、必ずしも代償分割のほうが得だというわけではありません。ただ、少なくとも、譲渡所得税や社会保障への影響を第一に考えるとしたら、換価分割ではなく、代償分割を検討する価値も大いにあると思われます。

 

 

扶養親族から外れる可能性

 前述のとおり、相続に際して、不動産を売却した場合、不動産の譲渡所得が発生する可能性があります。所得が発生するということは、扶養親族から外れてしまう可能性があることも意味しています。

 扶養親族として控除を受けるには、年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であることが必要です。不動産等を売却して、譲渡所得が生じた場合、1年間だけではありますが、扶養親族から外れてしまう可能性があるので、注意が必要です。

 なお、よく「103万円」という金額を聞くことがあると思いますが、103万円というのは給与所得の場合に扶養親族を外れる条件であって、譲渡所得等の場合には、38万円(令和2年以降は48万円)なので注意が必要です。

 また、この扶養親族から外れるというのは、税制上、扶養親族を外れるという意味です。社会保険については、通常、不動産売却において譲渡所得があった場合でも、一時所得とされ、社会保険上、扶養親族を外れるようなことはありません。

 従って、相続に伴って、不動産売却があり、譲渡所得が生じたような場合でも、社会保険上の扶養親族を外れるようなことはないのが原則です。

 

 

 

 

 なお、限定承認については、

介護保険の負担割合・限度額認定

 近年、高齢化社会が進み、長生きするのが当たり前の時代になってきました。高齢化社会のもとでは、被相続人が高齢者なのはもちろん、相続人が高齢者である場合も少なくありません。

 そうすると、相続人である高齢者が、相続財産を取得したことによって、現在受けている介護保険や医療保険のサービスに影響がないかを考える必要が出ていきます。

各種特例の利用

 相続財産たる不動産を売却した場合、いくつかの特例を受けられる可能性があります。この特例は、相続人の中にも受けられる人と受けられない人がいるような場合もあるので、状況によっては、特例を受けられる人が相続し、他の人には売却代金を使って代償金を支払う方が得な場合もあり得ます。

 扶養親族を外れるとか、国民健康保険の支払い等は、特例を受けた後の所得で検討すればよいことになります。

介護保険料についての変更

 以前は、特例を受けて所得税の軽減を受けた場合でも、介護保険については、特例を受ける前の所得を元に保険料を家試算する必要がありました。

 

 

上場株式の売却と特定口座について

 株式の場合も、換価分割を選択したり、相続後に売却した場合、譲渡所得が発生して、税金や社会保証に影響が出る可能性があります。

 ただし、株(投資信託含む)の場合、特定口座という制度があり、特定口座源泉徴収ありの口座を選択している場合、確定申告は不要であり、扶養親族から外れるとか、社会保障に影響が出るといった問題は発生しません。

 株式等を証券会社に預けている場合、三つの選択肢があります。

 

 一般口座

 特定口座源泉徴収なし

 特定口座源泉徴収あり

 

 一般口座というのは、取得費の管理から確定申告まで、すべて自分で行うような口座のことです。「一般口座」という名称からは、一般的な口座というようにも思えますが、一般口座を選択するよりも、特定口座を選択する方の方が非常に多いと思われます。

 特定口座とは、取得費等、税金の計算をするときの情報管理を証券会社が行ってくれる口座のことです。源泉徴収なしの口座では、計算は証券会社が行ってくれますが、確定申告は自分自身で行われます。一方、源泉徴収ありの口座では、計算を行ってくれることはもちろん、売買のたびに、税金が発生するときは税金分が源泉徴収され、損失が出て払いすぎた税金が発生した場合には還付金が戻ってくる等の処理も行ってくれるので、確定申告も不要になっています(証券会社をまたいで損益通算を行いたいときなど、確定申告が必要な場合もあり)。

 特定口座源泉徴収ありの口座でについては、確定申告手続きが不要で楽であるという面がメリットとして強調されますが、実は、どんなに利益が出ても、負傷親族から外れることもないし、社会保険料にも影響しないというメリット?もあるのです。

 このように、特定口座であれば、相続によって株式や投資信託を相続し、売却したとしても影響はありません。

 しかし、被相続人が一般口座で株式を持っていたような場合、相続人の特定口座には移管できない(一般口座を作って移さざるを得ない)という問題があります。

 結論として、被相続人が株式を特定口座で持っていたか一般口座で持っていたかによって、売却時の扶養親族から外れたり、社会補償に影響が出るかは変わって来るので注意が必要です。

 なお、現在は、一般口座の株を特定口座に移すのは、相続に関わりなく、できませんのでご注意ください。生前にご自身で、一般口座の株を特定口座に移そうと思っても無理なのです。 

<特別口座>

 上場株式の保管方法として、信託銀行(証券代行会社)の特別口座での保管という方法があります。主に、上場株式の株券の電子化以降も手続きをとらずにそのままにしておいた株が、信託銀行の特別口座で管理されています。

 特別口座の株は、証券会社に移管しないと売却できないほか(単元未満株の買取請求など除く)、特定口座への移管ができないので、一般口座での売却となり、扶養親族の問題や社会補償への影響も予想されます。

 

 工事中

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