〒182-0006 東京都調布市西つつじヶ丘三丁目26番地7アーバンフラッツMA202
(京王線筒十が岡駅北口徒歩2分

お気軽にお問合せください

受付時間:8:30~19:00
(ご予約で時間外でも対応可能)
定休日:土曜・日曜・祝日
(ご予約で対応可能)

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら

042-444-7960

 遺産分割の方法を教えてください。

 遺産分割とは、一言でいえば遺産を分けること、あるいは、遺産を分ける手続きのことです。通常、当事者同士の話し合い(遺産分割協議)からスタートして、家庭裁判所での話し合い(遺産分割調停)を経て、それでも解決しないときは、遺産分割審判に解決の場を移すこともあり得ます。

 今回は、それら一連の遺産分割に共通する事柄である遺産の分け方について考えていけたらと思います。 

遺産分割の方法例

①現物分割

①’共有分割

②代償分割

③換価分割

④遺産によって上記を使い分ける

 遺産分割の方法は、主に三つあります。

 現物分割、代償分割、換価分割です。共有分割は、現物分割の一種ですが、共有分割を現物分割と分けて考えて、四つの分割方法があると考えることもできます。

 不動産を例にとるとわかりやすいので、不動産について、三つの分割方法を見ていきたいと思います。

現物分割

 現物分割とは、遺産を、現物のまま、換価等することなく分けることです。

 例えば、甲不動産はAが、乙不動産はBが取得するというような場合です。一番オーソドックスでわかりやすい方法かと思います。実際、裁判所が関与して分割方法を決める場合に基本となるのが、この現物分割です。

 また、現物分割は、甲不動産をAが取得し、乙不動産をBが取得するというような分け方だけではなく、甲不動産をAとBで2分の1ずつ分けるというような分け方もあり得ます。現物分割の結果、共有状態が発生するような場合を、特に、共有分割と呼ぶ場合もあります。

 現物分割の長所は、非常に分かりやすいということです。他の分割方法と比べて、手間がかからないという特徴もあります。

 一方で、物件によって価値に偏りがある場合などには、相続人間に不公平が生じる可能性が出てきます。そのような場合、他に預金等があればうまく調整を図ることができますが、主な財産が不動産しかないような場合には、誰かが単独で相続することになると、相続人間で取得する財産の価値に偏りが生じることは困難になってしまいます。

 不動産を2分の1ずつ分けるとか、法定相続分の割合で分ければ、相続人間の不公平はなくなります。一方で、不動産の共有状態が発生することで、様々な問題が発生しかねません。こうした共有分割の問題点については、他の分割方法についてご説明した後、最後に触れたいと思います。 

 不動産(土地)を現物する場合で、その不動産を複数名が取得する場合、大きく分けて二つのやり方があります。

 一つは、土地を分筆したうえで、分筆後の土地をそれぞれが単独所有するというやり方です。

 もう一つは、土地を分筆せず、持分2分の1とか3分の1といった、共有状態で一つの土地を持ちあうやり方です。

 分筆してしまえば、それぞれ独立した不動産を単独所有することになるだけですから、不動産を共有することで生じる問題は発生しなくなります。ただし、東京の一般の宅地の場合、物理的に二つ以上に分けることが不可能な場合も少なくなく、そもそも分筆できないということが多いと思われます。

遺産分割協議書記載例(現物分割)

遺産分割協議書

被相続人      三鷹太郎 (令和元年6月12日死亡)

最後の本籍   東京都調布市深大寺六丁目78番地1

最後の住所   東京都調布市深大寺六丁目78番地1

 

 上記被相続人の遺産について、共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果、次のとおり決定した。

 

1 三鷹花子は、次の不動産を取得する。

(1)土地

次に掲げる土地

所   在   調布市深大寺六丁目

地   番   78番1

地   目   宅  地

地   積   148.12㎡

 

(2)建物

      次に掲げる建物

所   在   調布市深大寺六丁目78番地1

家 屋 番号       78番1の2

種   類   居  宅

構   造   木造スレートぶき平家建

床面積         56.78㎡

 

(以下省略)

代償分割

 代償分割とは、相続人のうちの誰かが相続財産を取得する代わりに、他の相続人に対して、代償として金銭等を支払う分割方法です。

 例えば、唯一の相続財産である甲不動産をAが取得する代わりに、Bに対して、代償金を1000万円支払うというようなやり方です。価値1億円の甲不動産をAが取得し、価値5000万円の乙不動産をBが取得する代わりに、AがBに2500万円を支払うというようなやり方も考えられます。

 代償分割の長所は、代償金によって相続人間の公平が図れるという点です。

 一方、短所は、相続財産を取得しようとする相続人に代償金を支払う能力が必要であるということです。そもそも、代償金の支払い能力がなければ、代償分割という方法は取りえません

 おろらくは、代償分割は、今後増えてくる分割方法だと思われます。

 親の所有している家に、子ども家族も同居するということが行われている一方、同居していない子どもが、親の死後に相続を遠慮するということがなくなってきているからです。

 こうしたことから、親と同居しており、親が亡くなったあともその家に住み続けたいと考えている場合、そのときに備えて、親の生前から、代償金を準備しておくことが必要なのではないでしょうか。

 相続には、相続発生後に何かを行うのでは遅く、相続発生前から準備しておく必要があるという意味では、被相続人の存命中から、既に相続は始まっていると言えるのです。 

代償金の決め方、支払い時期など

 この代償分割についての相談で多いのが、「代償金の相場はいくらか?」というようなご質問です。

 そのような場合、「相場がいくらかは言えない」とか「相場というものはない」というふうにお応えし、そのあとで、より具体的にご説明をするようにしています。一応は、時価を基準に代償金を考えていくことになるとは思うのですが、「相場」という考え方に捉われてしまうと、大事なことを見落としてしまうと思うからです。

 実は、代償金には、何かこの額ではないといけないという決まりはありません。あくまで、当事者間で合意できればいくらでもいいのです

 基準となる価格が、時価でも路線価でも固定資産税評価額でも何でもいいし、500万とか1000万とか深く考えずに決めたきりのいい額でも構いません。

 あるいは、通常、高くても数十万円と思われる「ハンコ代」というようなものでも構いません。

 そうした意味で、代償金の額は、相続人間で同意できるかが重要であり、言い換えると、同意できる額が代償金の「相場」であると言わざるを得ない面があるのです。

 次に、代償金の支払い時期ですが、これにも決まりはありません。

 一般的には、遺産分割協議書締結から2週間以内とか支払期限を定めることが多いと思いますが、遺産分割協議書締結や登記の必要書類である印鑑登録証明書の引き渡しと同時履行ということにしてもいいでしょうし、不動産売却の後に支払うとしても問題ないです。支払い方法も、一括でもいいし、分割でも構いません。支払い時期や支払い方法も、あくまで、当事者間の合意によって決めるものなのです。

 ただし、特に、代償金の支払を受ける側としては、注意しておかなくてはならないことがあります。それは代償金の支払い能力についてです。

 例えば、代償金を分割で支払うというような場合、一括では支払えないから分割で支払うという可能性が高いわけで、そうだとすると、本当に代償金が全額支払われるのか不安を感じざるを得ません。代償金の支払いを受ける側は、代償金がきちんと支払われるのか、支払う側に支払い能力はあるのかに留意する必要があるのです。

 一方で、支払う側も、自分の支払い能力を考え、無理をしてはいけません。自分の支払い能力を超えた代償金を支払ってしまうと、結局は相続した不動産を失ってしまうことにもなりかねません。代償金を支払ってまで手に入れた不動産を失ってしまったら、まさに、本末転倒としか言いようがありません。

 なお、代償分割の際に、代償として他の相続人に引き渡すものは、金銭に限りません。例えば、不動産を他の相続人に代償として引き渡すことも可能です。

遺産分割協議書記載例(代償分割)

遺産分割協議書

被相続人      三鷹太郎 (令和元年6月12日死亡)

最後の本籍   東京都調布市深大寺六丁目78番地1

最後の住所   東京都調布市深大寺六丁目78番地1

 上記被相続人の遺産について、共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果、次のとおり決定した。

 

1 三鷹花子は、次の不動産を取得する。

   なお、三鷹一郎及び調布佐須子は、本協議書締結時に、登記申請に必要な書類を引き渡す義務を負うものとする。

(1)土地

次に掲げる土地

所   在   調布市深大寺六丁目

地   番   78番1

地   目   宅  地

地   積   148.12㎡

 

2 三鷹花子は、第1項に記載の遺産を取得する代償として、三鷹一郎に対し、金1000万円を支払うものとする。

 その支払いについては、金1000万円のうち金100万円を本分割協議成立後2週間以内に、金900万円を第1項記載の不動産の売却代金受領後2週間以内におこなうものとする。

 

3 三鷹花子は、第1項に記載の遺産を取得する代償として、調布佐須子に、金1000万円を支払うものとする。

 その支払いについては、第1項記載の不動産の売却代金受領後、2週間以内におこなうものとする。

 

 この例では、代償金の支払い時期について少し工夫してみました。

 代償金の支払い時期は、遺産分割協議成立後すぐにということが多いかと思うのですが、今回の例では、三鷹一郎さんに対する支払いは、代償金のうち一部をすぐに支払い、残りを、不動産売却後に行うというようなちょっと変則的な形にしてみました。また、調布佐須子さんへの代償金の支払いは全額、不動産の売却後に行うことにしてみました。

 このように、代償金の支払い時期は、当事者さえ合意すれば、いつでもよいというのが原則です。

 代償金の額についても、今回は全ての相続人に同じ額を支払うことにしましたが、相続人ごとに代償金の額を変えることもできます。

今回の代償分割の問題点と換価分割との違い

 今回の例は、売却後に代償金を支払うものですが、この例を見た時、いくつかの疑問が生じると思います。

 例えば、売却代金が手に入ってから代償金を支払うのであれば、換価分割にしたほうがよいのではないかという疑問、あるいは、「売却してから代償金を支払う」ことになっているが、もし売れなかったらどうなるのかという疑問です。

 まず、第一の疑問についてですが、売却後に代償金を払うのであれば、換価分割のほうがよいのではないかという疑問が生じるのは、当然だと思います。売却後には、不動産は現金化されているので、その現金を等分に分けることはたやすいはずだからです。

 確かに、「平等に分ける」という観点からすると換価分割のほうが優れている面もあります。売却後に代償金を支払うとしても、遺産分割協議の時点(=売却の前の時点)で代償金の額を決めておかないといけないのですが、いくらで売れるかわからない以上、代償分割という方法を使う場合、平等に分けることは不可能です。

 しかし、換価分割のデメリットを回避するために、代償分割のほうを選択する場合があり得るのです。

 換価分割のデメリットについては、換価分割の説明のときに触れますが、例えば、換価分割の場合、換価した金銭を受け取ったすべての相続人に譲渡所得が発生する可能性があり、不動産の譲渡所得税がかかったり、社会保険料や社会保障の負担額に影響が出る可能性があります。こうしたことを不都合と考え、換価分割を選択しないことが考えられます。

 不動産を売却したときの特例の適用を受けられるかどうかという観点から、代償分割を選択することもあり得ます。例えば、居住用不動産の3000万円の特別控除の特例があります。この特例は、相続財産である不動産に居住していた相続人しか使えません。

 例えば、相続人が長男と次男の2名で、長男のみが被相続人である親と同居していたとします。

 長男が不動産を単独で相続し、その売却代金で他の相続人に代償金を支払う場合には、3000万円の特別控除をフルに使うことができます。

 一方、換価分割して、売却代金を2分の1ずつ分ける場合、長男は、3000万円の特別控除を使えるのに、次男は、特別控除を全く使えず、特別控除なしに税金の計算をする必要が生じてしまいます。

 従って、特例を利用できる人に不動産を相続させ、他の相続人には代償金を支払うというほうが得な場合が生じ得ます。

 あるいは、いくらで売れるかわからないというリスクを一人の人が負うという考え方もあり得ます。いくらで売れるかわからないということは、思っていたよりも高く売れる可能性があると同時に、思っていたよりも安くしか売れない可能性も秘めています。代償金の額は、不動産が高く売れっても安く売れても変りません。ある意味、その金額が保証されていることになります。

 不動産がいくらで売れるかわからないという不確実性(リスク)を一人の人が負い、他の人は結果に関わらず、決まった額を受け取れることにメリットを見出す考え方も充分にあり得ると思います。

 続いて、不動産が売れない可能性についても考えてみたいと思います。「不動産売却後に代償金を支払う」という場合に、もし、不動産が売れなかったらどうするのでしょうか?

 そのような場合、「売れない」というのにも限度があるように思います。例えば、不動産の状況によって変わってくるでしょうが、1年、2年であれば、売れないという状況でもさほど不自然ではないと思います。一方で、5年たっても売れないというような場合には、そもそもの遺産分割協議の内容に問題があるように思います。

 場合によっては、遺産分割協議のやり直しも視野に入ってくると思いますが、全員の同意なしに遺産分割協議をやり直すのは困難で、全員の同意が得られないような場合には、遺産分割協議の内容につき錯誤無効を主張する等、法的な措置を検討する必要が出てくるかもしれません。

 そのようなことがないように、どれくらいの価格で売るつもりなのか、その価格設定に無理はないのか等、相続人間で話し合っておく必要があると思います。そして、売れない場合にどうなるのか不安を感じるのであれば、例えば、「○年○月○日までに売却できないときには、遺産分割協議をやり直すものとする」というような一文を入れておくことも考えた方がよいと思います。

換価分割

 換価分割とは、相続財産を換価(売却)して、その代金を分割するというものです。

 換価分割のやり方は大きく分けて二通りあります。

 一つ目は、いったん、不動産を相続人間の共有名義にして、共有不動産を売却し、共有持分に従って、売却代金を分けるというものです。

 もう一つは、形式上、誰かの単独名義にしたうえで、売却し、その代金を相続人間で分割するというものです。

 二つ目の方法をとっても、遺産分割協議書上、換価分割であることであることが明確になっていれば、一つ目のやり方と税金面等で異なることはありません。

 換価分割の長所は、不動産のような等分に分けることが困難なものでも、ほぼ平等に分けることが可能であるという点です。相続人間の平等を追求すれば、究極的には、換価して分割するほかないと思います。

 しかし、一方で、いくつかのデメリットもあります。

 まず、換価分割は不動産の売却を伴うので、その不動産に住み続けることはできなくなります。相続人の誰かが、相続財産である不動産を利用し続けたいという希望とは両立しえない分割方法になります。

 また、不動産を売却するということは、譲渡益が発生する可能性があることを意味します。つまり、不動産を売って利益が出た場合、不動産の譲渡所得税(譲渡益税)を収める必要が生じるのです。

 後で触れますが、換価分割の場合、特例の適用の有無により、相続人によって支払う税金の額が変わってきたり、相続人それぞれの立場によって社会保障費に影響が出たりしかねないというデメリットもあります。仮に、「売却代金を2分の1ずつ分ける」という一見平等に思える分割を行っても、その後に支払う税金まで考慮した「手取り」の額は全然平等でないということもあり得るので注意が必要です。

換価(売却)することで生じうる譲渡益税の問題

 この譲渡所得税とは、譲渡益について発生する税金ですが、まずは、不動産売却時の譲渡益とはなにかを考えてみたいと思います。

 譲渡益とは、費用等を抜きにすれば、取得価額と売却価額の差額ということになります。売却価額がいくらかは明らかですが、取得価額とはどんな価額なのでしょうか?

 相続発生後に不動産を売却した場合の取得価額とは、相続発生時の価額ではなく、被相続人等が一番最初にその土地を買った時の価額になります。例えば、お父さんが昭和30年2月4日に不動産を購入し、平成31年3月10日に亡くなったとすると、この土地の取得価額は昭和30年に土地を購入した時の価額になります。

 今現在、昭和30年代や40年代に不動産を購入された方の相続が増えてきている印象を受けます。こうした時期に不動産を取得した方で、東京23区や多摩地区の場合、ほぼ100%、譲渡益が発生することになると思います。今とは一ケタ違う金額で不動産を購入している可能性が高いからです。

 従って、東京23区や多摩地区で換価分割を考える場合、不動産を売却するときに発生する税金のことについて考えておく必要があります。

 税金を考える際に一つ重要なことがあります。いくらで買ったかを示す書類があるのかということです。通常、売買契約書等があれば、いくらで購入したかがはっきり分かるかと思います。ご自身で不動産を購入された場合、売買契約書等を保管していることの方が多いのではないでしょうか。

 しかし、お父さんやお爺さんが何十年も前に購入した不動産の売買契約書の場合、どこにあるか分からない、探しても見つからないというような場合も少なくありません。

 どうしても、取得価額が分からない場合どうすればよいでしょうか?

  そのような場合、取得費の額を売った金額の5%相当額とする ことができます。分からない場合だけでなく、実際の取得費が売った金額の5%相当額を下回る場合も同様の扱いが可能です。

 従って、先祖代々の土地で取得価額が分からないというような場合でも、譲渡益の計算ができないということはありません。しかし、取得費が5%ということは、費用等を抜きにすると、売却金額の95%も利益が出ていることになってしまいます。税金のことをあらかじめ考えておかないと、思わぬ税負担が発生し、「こんなはずじゃなかった」と後悔するような事態になりかねないのです。

 なお、換価分割の場合、仮に形式的に誰かの単独所有という形を取り、その後みんなで売却代金を分けるという方法を取った場合でも、相続税や譲渡税は、売却代金を取得した人に取得分に応じて発生するのでご注意ください。 

各種特例の利用を検討する

 工事中 

遺産分割協議書記載例(換価分割)

遺産分割協議書

被相続人      三鷹太郎 (令和元年6月12日死亡)

最後の本籍   東京都調布市深大寺六丁目78番地1

最後の住所   東京都調布市深大寺六丁目78番地1

 

 上記被相続人の遺産について、共同相続人間において遺産の分割について協議をした結果、次のとおりに決定した。

 

第1条 別紙遺産目録記載の不動産につき、次項のとおり換価分割する。

 

2 別紙遺産目録記載の不動産につき、相続人三鷹一郎はその全てを取得する。相続人三鷹一郎は速やかにこれを売却換価し、売却代金から不動産仲介手数料、登記手続費用及び必要な経費等を控除した残額を、相続人三鷹一郎及び相続人三鷹花子が各2分の1の割合で分配する。

 なお、各相続人は、不動産売却に伴う譲渡所得税については、上記記載の各取得割合に基づく申告納税を行うものとする。

 

3 別紙遺産目録記載の不動産内の動産類については、相続人三鷹一郎が換価・廃棄・処分できるものとする。

 

4 別紙遺産目録記載の不動産を換価するまでに発生する水道光熱費等の管理費用や固定資産税については、相続人三鷹一郎及び相続人三鷹花子が各2分の1の割合で負担するものとする。

 

(以下省略)

 この例は、換価分割でも、形式上相続人のうちの一人が所有権を取得し、売却代金を分ける場合の例です。前述のとおり、いったん、不動産を相続人間の共有名義にして、共有不動産を売却し、共有持分に従って、売却代金を分けるやり方もあります。

 相続人のうちの一人が名義上の所有者となり、売却手続きを行う方法のほうが、のちの手続きが簡便になる者と思われます。相続人が二人くらいならばともかく、相続人が4人、5人といる場合、売主が4人、5人となってしまうわけで、換価の際の不動産売却手続きが面倒になるからです。通常、売買に絡む人数が増えれば増えるほど、手続きは面倒になります。不動産売買の際には、売主の署名捺印や意思確認などが必要となりますが、その手続きが人数が増えれば増えるほど、煩雑になるからです。

 一方で、名義上の所有者となった相続人だけが売買を主導する場合、その一人に好きなように売買されてしまうというリスクがあるのも事実です。とはいっても、売買するという結論は決まっており、かつ、不動産を不当に安く売ってしまったりしたら、全員が損するわけで、好きなように売買されるリスクというのは、通常は、あまり問題にならないのではないかと思います。

 なお、専門家に、遺産分割手続きを依頼する場合、遺産分割協議書の作成や登記手続きだけを依頼するのではなく、その後の換価売却と売却代金の分割までご依頼することができます。その場合、手続きを受任した専門家が、売却手続きを代理人として行うわけで、そのような場合には、名義上の所有者を一人にするか複数にするかの違いはほとんどないと思われます。

 換価分割の場合、まず、換価分割であることを明確に示しておく必要があります。そうしないと、いったんAさんのところには行った売却代金をBさんと分けるとき、AさんからBさんへの資金の流れが、贈与と区別できなくなってしまうからです。ここをきちんとしておかないと、贈与税が発生してしまったり、予期しない結果が生じる可能性があるので注意が必要です。

 換価するに際して、色々な経費が掛かります。大きなものとしては、不動産仲介手数料や測量費用、残置物処理費用(建物込みで売却する場合、建物の中を空にしておく必要があります)などが考えられます。今回お示しした例もそうなっていますが、こうした費用を控除した残額を一定の割合で分割するように記載しておきます。そうしないと、費用の負担をどうするかという問題が生じかねないからです。

 ただ、仮に書いていなかったとしても、売却に伴う費用を利益を得る全員が共同して負担すべきという結論が、合理的意思解釈として導き出されるのではないかと思われます。そうしたこともありますし、具体的な費用の中身は限定列挙ではなく例示であると考えられると思われるので、考えられる費用をすべて書かなくてはならないというようなわけではありません。

 分割協議の段階で特に揉めたりしていなければ、主な費用を例として挙げ、売却に必要な費用を控除した残額を分割するという文言にしておけば、よいのではないかと思います。

 今回お示しした例では、建物内の動産を、売却行為を行う人が換価・廃棄・処分できるという一文を加えておきました。この一文を入れるかどうかは別として、実際には、建物内の動産を自由に処分できないと、売却に手間取る可能性があります。

 ただし、動産の中には価値の高いものもありますし、客観的な価値はないが形見として主観的には価値を有するものもあるかと思います。価値の高いものについては、分割協議書上、誰が取得するかを決めておき、その後、必要があれば、形見分けをしたうえで、その残りを売却手続きを行う人が自由に処分等できるようにしておけばよいのではないでしょうか。

 なお、換価分割の例では、不動産を「別紙遺産目録記載の不動産」というように記載しました。このような記載でも、現物分割の例のように「次の不動産を取得する」と記載して、すぐ下の欄に不動産を特定する情報を書き入れても、どちらでも問題ないです。

 

 

 

 

建物を壊す場合の換価分割

 土地建物を相続した場合の、換価分割では、建物を壊して土地のみを売却するという流れになる可能性もあり得るかと思います。日本では、建物が建っているより、更地の方が価値が高いことが一般的だからです。

 

 

 

 

社会保険の負担や扶養にも注意

 譲渡所得があるということは、社会保険料や負担割合、扶養家族でいられるかといった問題が生じうることを意味します。

 仮に形式的に誰かの単独所有という形を取り、その後みんなで売却代金を分けるという方法を取った場合でも、相続税や譲渡税が、売却代金を取得した人みんなに生じうることは既に書いた通りですが、社会保険料等の問題も、売却代金を取得した人全員に発生しうる問題です。扶養から外れたり、保険料が上がったりという社会保険への影響も、売却代金を取得した全員に及ぶのです。

 その結果、人によっては、社会保険の負担が変わってしまう場合があるので、それを考慮する必要があります。

 社会保険の面で、どうしても不具合がある場合、換価分割ではなく代償分割を選択するほうがよい場合もでてきます。代償金は、相続税の対象にはなり得ますが、代償金には不動産の譲渡益税はかからないからです。相続財産である不動産を売却して、相続人であるAさんが、仮に全く同じ額を取得する結果になったとしても、換価分割の結果売却代金を取得するのと代償金を取得するのでは、その後の1年間の社会保険料等がかなり違ってくる可能性があるのです。

 遺産分割は、その後の社会保険の負担等まで検討して行うべき場合もあり、その意味では、介護や医療などの知識までも求められ、関わる専門家の総合力が問われる分野でもあるのです。 

 なお、社会保険料(介護保険料)については、2018年に大きな制度変更がありました。そうした点もあり、相続財産である不動産を売却した場合の社会保険料等への影響については、別に項目を分けて、ご説明できたらと思います。

 遺産分割の社会保障への影響を教えてください

 

お問合せ・ご相談はこちら

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せはこちら

042-444-7960

受付時間:8:30~19:00(ご予約で時間外でも対応可能)
定休日:土曜・日曜・祝日(ご予約で対応可能)

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

042-444-7960

フォームでのお問合せ・ご相談は24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

アクセス・受付時間

住所

〒182-0006
東京都調布市西つつじヶ丘三丁目26番地7 アーバンフラッツMA202

アクセス

京王線つつじヶ丘駅徒歩2分

受付時間

8:30~19:00
(ご予約で時間外でも対応可能)

定休日

土曜・日曜・祝日(ご予約で対応可能)

※フォームからのお問合せは24時間受付しております。

代表者ごあいさつ

向後 弘之

地元密着、親切・丁寧な対応を心がけておりますので、まずはお気軽にご相談ください。 

代表者ごあいさつへ